株式会社ワイズスタッフ
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「ワイズスタッフ」誕生秘話 1998年『日経ウーマン 9月号』から

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「ワイズスタッフ」という会社が誕生する直前、1998年の『日経ウーマン 9月号』に、当時ライターであった代表取締役の田澤由利が書いた記事です。 当時のタイトルは、「SOHOの夢と現実」でしたが、「ネットオフィス」の 原型である「チームSOHO」という考え方、そして、ワイズスタッフ起業に 至った経緯をお読みいただけます。

※日経ウーマン編集部様のご厚意により、ここに転載させていただきます。

 


プロローグ

「もしもし、田澤と申しますが……」

その瞬間、相手の怪訝そうな雰囲気が電話口を通して伝わってくる。私の名前には、つけるべき「肩書き」がない。ただの「個人」なのだ。この事実をはじめて認識したのは、7年前。夫の転勤とはじめての出産を理由で、長年勤めた会社を退職したときのことである。

そのとき私は、その事実に愕然とし、社会からの疎外感にさいなまれた。そして、それをきっかけに、在宅ライターの道を歩み始めた。どこに住もうが、子供が何人いようが、社会とかかわり続けて自分の能力を生かしたい、その思いが私を強くした。そして、今、「SOHOブーム」の中、私のような生き方を理想とするワーキングウーマンが増えている。

「会社を退職したらSOHOで仕事がしたい」
「子供の成長をそばで見つめながら、社会参加したい」
「転勤族の彼と結婚しても、仕事は続けたい」

結婚、出産、子育て、介護。女性が女性であるがゆえに、避けては通れない「壁」。そして、その壁を打ち破り、その夢をかなえてくれる「SOHO」。

しかし、「SOHO」は本当に理想的なワークスタイルなのか。「SOHO」ブームの大きな波に飲まれつつ、今まさに自分の船を漕ぎ出そうとしているひとりのSOHOワーカーの体験を通し、SOHO予備軍であるワーキングウーマンの皆様に、その「夢」と「現実」、そして「希望」をお話ししたい。

 


夢をかなえるSOHO

■北の地で娘3人とのドタバタ生活

私は、今、夫の転勤で北海道の北見市に住んでいる。冬は、マイナス20度以下にまで下がる極寒の地。札幌まで列車で6時間、車でも5時間かかる。そして、6歳、3歳、1歳の3人の娘たち。その生活たるや、いわゆる「都会のキャリアウーマン」とはかけ離れたものだ。

しかし、そんな私でも、昼間は仕事に忙しい。朝、夫と長女を送り出し、下の2人を保育園に送り届ける。洗濯や家の片付けを簡単にすませ、朝9時、私のワーキングタイムが始まる。社宅の2階にあるパソコンに向かい、インターネットで情報を収集し、原稿を書き、東京の出版社に送る。

そして、午後4時。子供たちを迎えに行き、買い物をし、夕飯、お風呂、寝かし付けと、ホっと一息つくと、夜中の12時。そして、仕事の第2ラウンドが始まる。

 『田澤由利の1日』
   7:00  起床
   8:00  保育園に送る
   8:30  洗濯・掃除
   9:00  仕事開始
   12:00 昼食
   16:00 保育園へ迎え
   18:00 夕飯
   20:00 お風呂
   21:00 寝かしつけ
   22:00 夫帰宅
   00:00 仕事再開
   3:00  就寝

■素晴らしい北の国のSOHO生活

SOHOだって悩みはないわけじゃない。毎日、朝から晩までパソコンの前に座っている弊害。そう、一番の悩みはやせないこと。SOHOライフのポイントは、仕事時間の管理より本人の体重管理かもしれない(笑)。また、まわりの目も複雑。都会では「SOHO」という言葉が一般化しつつあるが、地方はまだまだ。「家で仕事をしている」というと「あらぁ、大変ねぇ」と同情されるのだ。袋張りをしていると思われているのかもしれない。

とはいえ、私は今の生活が非常に気に入っている。子供たちも大自然の中、のびのびと生活している。週末は家族でスキーにキャンプ。食べものもおいしく、物価も安い。生活用品だって、困らない。そして、インターネットがあれば、情報スピードは東京と変わらない。夫の赴任が決まったときは、「北見」と聞いて頭がくらくらしたが、今では少しでも長くこの地にいたいと願っている。しかし、サラリーマンの性。2、3年でまた引越しだ。ちなみに、夫の会社は「赴任希望地」がかなえられる確率はかなり低いが、「北海道と沖縄だけは、希望すればすぐに行ける」という噂。こうなったら次は沖縄に行くしかないね(笑)。

■この素晴らしさを、より多くの女性に!

家族みんなが一緒に住むことができる。子供たちを「おかえり」と家で迎えることができる。自分のやりたい仕事ができる。私にとって、SOHOは「理想のワークスタイル」だ。この素晴らしさを、もっともっと多くの女性に味わってもらいたい。いつしか、自然にそう思い始めた。しかし、そのときは、この思いが、私自身に「転機」をもたらすとは想像もしなかった。 

 


現実は電脳内職

■在宅ワークの悩みや相談が氾濫

SOHOブームの中、「地方に住み、子育てをしながら仕事をしている主婦」というスタンスでいくつかの雑誌などでご紹介いただいた。その結果、記事を読んだ女性から相談メールが次々と届きはじめる。また、メーリングリストなどで知り合う女性も同様。ネットを歩けば「在宅ワーク希望女性にあたる」と言っても大げさではなかった。

「私も在宅で仕事がしたいのですが、どうすればいいのですか?」
最初のうちは、「派遣会社に登録しましょう。」「自分でホームページを作ってPRしましょう。」「どんな小さなコネでも大切にしましょう。」とアドバイスしていたが、次第に矛盾を感じるようになった。

「私でも在宅で仕事ができるでしょうか」
「いろいろ登録したが、どこも音沙汰無しです」
「どうやって営業したらいいのですか?」
「データ入力しか仕事がありません」
「在宅ワーク紹介会社に登録料を支払ったけど、なしのつぶてです」

こんな質問や相談が次から次へと溢れてくる。なぜ、こんなに悩みや相談が多いのか?SOHO業界に何が起っているのか?相談のメールに返事を書くだけでは、何も解決にならないと感じ始めたのだ。

■マスコミ報道で「夢」が一人歩き

今、SOHOという言葉は、さまざまなメディアで取り上げられている。「Small Office, Home Office」の語源通り、都会に出なくても、近所でオフィスを構えたり、自分の家の中にオフィス空間を作り仕事ができる。大自然の中、悠々自適に仕事をする女性ライター、脱サラしホームページでビジネスを始めた男性、小さな子供のお昼寝時間にアルバイトする主婦……。すべて「SOHO」という言葉でくくられ、新しい仕事のスタイルとして世間の注目を浴びている。

このため、これらを扱ったTV番組や記事を見た女性、特に子育てや介護などの事情で外で働けず、社会からの疎外感に悩んでいる女性たちが、「私も」という「夢」をいだいても、それを非難することはできないだろう。しかし、そこには、一人歩きしてしまった「夢」と、かけ離れた「現実」が存在するのだ。

■パソコン買ったが、仕事はない

パソコンを買って、インターネットをすれば、あこがれの在宅ワーカーになれる。多くの女性が、夢をいだいて通信ネットワークの世界へ飛び込む。それに応えて「在宅ワークを仲介する」会社の存在が登場し始める。ホームページで人材を募集し、オンラインで気軽に人材登録できるところもある。

しかし、現実には「在宅での仕事」を手にする女性は非常に少ない。なせだろうか。そこには、在宅の仕事を発注する「企業」、在宅の仕事を仲介する「会社」、仕事を希望する「女性」、それぞれにそれぞれの原因がある、と私は考える。

 発注企業は、在宅女性の持つ能力を認めていない。
 仲介会社は、膨大な登録メンバーの能力を把握していない。
 「空いた時間にお小遣いかせぎ」という意識の女性が多い。

その結果、仲介会社は、「安くて急な仕事でもOK」というふれこみで営業し、得た仕事は、実績のある一部のメンバーだけに渡すにとどまっている。そして、これにより、企業や仲介会社にコネがない女性は、たとえやる気と能力があっても、仕事にたどり着くことができないのではないか。

そして、「パソコンがあれば家で小遣い稼ぎができると思い込む」女性と、「本気で在宅ワークをしたいけど、仕事が見つからない」女性と、「在宅女性を使えば、急な仕事でも安くできると思う」企業だけが残る。

この状況は、SOHOという新しい言葉でオブラートされただけ、納品手段にネットワークが利用されただけで、従来の『内職』と変わらないのではないか。そう、SOHOの現実は、「電脳内職」なのだ。

■厳しいSOHO業界の目

また、この「SOHO」ブームは、別の問題も起している。従来から「フリー」という形で在宅で仕事をしてきた、「プロ」の方たちへの悪影響だ。私も含めて、ライター、グラフィックデザイナー、プログラマなど、自分のスキルを生かして、従来から在宅、あるいはスモールオフィスで仕事をしてきた人たちだ。自分たちにとっては従来通りのスタイルにもかかわらず、「SOHO」ブームにより注目を浴び、マスコミによって誤ったイメージが作り出されてしまっている。さらには、「初心者の安易な参入」により、市場自体が混乱し、業界全体の信用が落ち、仕事単価が低下する……といった問題も実際に起こっている。

このため、「在宅で仕事をしたいのですが、どうすればいいのですか?」という女性からの質問に対し、先輩の意見は厳しい。「それは、道行く人に、数学を勉強したいのですが、どうすればいいのか聞いているようなものだ。」と。
 


ジレンマの克服

■従来の働き方も、SOHOも基本は同じ

私は私なりに努力をして、今のワークスタイルを手に入れた。だから、ネットワークを使えば安易に仕事ができると思う女性は、自業自得だ。そう思うこともあった。しかし、そうじゃない女性もいる。自分の意思に反し社会から離れることになった7年前の私。あのとき味わった社会からの疎外感、何とかして社会にかかわっていきたい、自分の能力を生かしたいという強い気持ちを持って感じて活動している女性も少なくない。彼女たちが「子供のお昼寝の間にアルバイト」感覚の女性と一緒に評価されるのは、あまりにもかわいそうではないか。コネも営業の方法も知らない彼女たちに、「仕事は自分で探すもの」と突き放していいのだろうか。「会社」で働いているときは、営業などできなくても自分の能力を生かせたであろうに……。

そう、考えたとき、1つの答えが見え隠れした。そうだ。「会社」ではそうだったんだ。SOHOといったって、働く場所が違うだけじゃないか。仕事の内容、やり方、価値は、従来の働き方と同じであってもいいはずだ。それなのに、「SOHOだから賃金が安い」「SOHOだから仕事が限られる」「SOHOだから自分で営業しなくてはいけない」というのは変じゃないか。

■答えは身近なところに……

そして、その答えは、意外にも身近なところにあった。この2年間、私は自分のつてで依頼される仕事を、前の会社で一緒に働いていた友人たちとネット上で打ち合わせをしながらこなしてきた。OL時代バリバリ仕事をしてきた彼女たちは、子育ての合間とはいえ、責任を持って信頼できる仕事をしてくれた。そして、ネット上でみんなが協力し合うことにより、1人ではできない仕事も完成できた。

会社において「部」「課」「係」といった「チーム単位」で仕事をするのと同様に、SOHOにおいても「チーム単位」で仕事ができるはずだ。これにより、より責任のある仕事を、より確実にこなすことができるかもしれない。そして、このことは、SOHOの可能性、SOHOの仕事の幅、を広げる起爆剤にはなるかもしれない。

■営業ができなくても、能力を生かせる

「SOHO」とはいえ、従来の「外に出て働く社会」と働く場所が違うだけで、本質的なものは同じであるはず。マスコミで、女性ライター、脱サラ男性、アルバイト主婦が、「SOHO」という同じ言葉でくくられているのが間違いなのだ。彼らは、当然のことなから、同じレベル、同じ能力、同じ土俵で仕事をしているのではない。そこで、従来の社会における「働く形態」を、次の3つに分類してみた。

(1)自分で仕事をする人(起業家・個人事業家など)
(2)会社の中で自分の能力を生かす人(サラリーマン)
(3)アルバイトやパートなど自由に仕事をする人(アルバイター)

人は、自分の適性・能力、仕事に対する考え方によって、それぞれの「働く形態」を選んでいる。そして、社会には、それを受け入れる「しくみ」がある。

一方、SOHOの場合はどうか。

(1)自分の力で仕事を開拓し、独自にやっていきたい人
(2)ネットワークを使って自分の能力を生かしたい人
(3)家にいながらちょっとアルバイトしたい人

マスコミで(1)が取り上げられ、それを見た女性が「自分も」と考える。しかし、これらの女性は、必ずしも(1)にはなれない。その能力や仕事に対する考え方で、(2)か(3)に分類される人がほとんどだろう。

しかし、今の社会には、その受け皿となる「しくみ」ができていない。(1)の人は自分で仕事を取って、責任を持って仕事をする能力がある。一方、(3)の人は、もともと気軽な気持ちのため、与えられた仕事が「安くて急ぎの単純作業」でも割り切ることができる。しかし、(2)の「仕事の能力とやる気はあるのに、仕事を手に入れる能力やコネの無い人」は、結局何もできないでいるのだ。

会社に営業マンと技術者がいるように、SOHOの人材にも「営業力が無いけれど、別の能力がある人」はたくさんいるはずである。

■SOHOの3つのパターン

話をわかりやすくするため、SOHOの分類に名前をつけてみた。

『スペシャリストSOHO』
 「起業家」に相当。技術を持ち単独で仕事をする。
『チームSOHO』
 「会社員」に相当。チームの一員として仕事をする。
『アルバイトSOHO』
 「アルバイター」に相当。一時的に臨時の仕事をする。

今の社会に必要なのは、『チームSOHO』を受け入れ、育てるしくみではないか、という考えに達した。つまり、「能力のある女性が、その能力を在宅で発揮できる環境」を作ること。「能力のある女性」とは、結婚、出産、夫の転勤、老人介護などを理由に、ビジネスの第一線を離れなくてはならなかった女性たち。彼女たちは、プロ意識を持ち、責任感があり、そして男性と同等に仕事ができる。いや、もしかしたら、終身雇用制の大船に乗ってのんびり仕事をしている多くの男性よりも、有能かもしれない。

彼女たちに適性のある仕事環境を与えることは、彼女たちが感じている「社会からの疎外感」をとりはらうだけでなく、日本の社会全体を活性化させる原動力となりうるのではないのだろうか。

 


打開へのシナリオ

■チームSOHOが社会にもたらすもの

「チームSOHO」というのは、私の造語だ。実際には、「ネットワーク上でチームを組んで仕事をしている」ケースは過去にもたくさんある。しかし、便宜上そうやっている場合がほとんど。また、アメリカでは、「バーチャルチームワーク」という言葉で、経営手法として研究が始まっている。しかし、私が提案しているのは、現場のニーズから生まれた「仕事の形態」としての、「チームSOHO」だ。

もしこの「チームSOHO」が、「仕事の形態」として社会に認められたら、今のSOHOにかかわるさまざまな人にメリットをもたらす。

まずは、「子供のお昼寝の間にアルバイト」感覚の女性。私は彼女たちを否定しているのではない。「パソコンを使えば仕事が簡単にできる」という風潮に問題があると思っているだけだ。「チームSOHO」が社会で活躍することにより、在宅ワークを希望する女性が、「SOHOも通常の労働社会と同じである」ことを認識できればいい。そして、その上で『アルバイトSOHO』という割り切った形が成り立てば、仕事を与える側、受け取る側のくい違いも少なくなるだろう。

一方、仕事を発注する側の企業にも大きなメリットがある。経済不況で人員のリストラが実施されているが、労働力までリストラしてしまっては、未来がない。そこで、ネットワークを通じ、外部にレベルの高い仕事を外注する、という手法が考えられる。社会経験豊かで能力のある女性を、最大限に活用するのだ。正社員として教育を行うよりも、はるかに即戦力になりコスト的にも魅力的な労働力となるはずである。

そして、「チームSOHO」という仕事の形態が確立すれば、「営業力がないとSOHOはできない」と言われあきられていた女性が、経験や能力を生かした仕事を見つける道が開ける。「在宅だから」という理由で、不本意な仕事、不本意な賃金で働かなくてもよい。仕事の「形態」や「内容」は変わっても、社会でもまれた培った責任感や能力は、会社を退職したからといって決して無くなるものではないのだから。

さらに、女性の能力を把握しきれず、その登録メンバーを活用しきれなかった在宅ワーク仲介会社にもメリットがある。登録女性の仕事の形態を分類することにより、発注企業へのアプローチにバリエーションを持たせることができる。また、新しい労働力の形成は、新しいベンチャービジネスへとつながって行く。

最後に、以前から在宅で仕事をしていプロの人たちは、『スペシャリストSOHO』として、SOHOブームで新規参入してきた女性とは一線を引くことごできる。これにより、市場の混乱をおさめ、従来のスペシャリストとしての「価値」を取り戻すことができる。

■小さな流れから……

もちろん、世の中そんなにうまくいくものではない。しかし、「チームSOHO」の仕事形態による「実績」が証明され、その「ノウハウ」が公開され、そして賛同した多くの企業や団体が「実施」すれば、1つの大きな「流れ」となる可能性があるのではないだろうか。

 


チームSOHOの実践

■ネット上でチームを組み、高度な仕事をこなす

「チームSOHO」という言葉と理想を打ち立てるだけでは、何も変わらない。「形」が必要だ。そこで、私がこの2年間やってきたネット上での仕事の手法を、整備することから始めた。そして、今まで漠然と運営してきたこの「ネット上で仕事をするチーム」に、『Y's STAFF』(由利'SとWISEの両方の意味)という名称をつけ、その特徴を明確にすることにより、「形」を作りあげていった。

『チームSOHOの仕事の流れ』

受注
プロジェクトチームの結成
プロジェクトの進行
プロジェクトの終了
支払い

『チームSOHOの特徴』

プロジェクト単位で運営する
どんな小さな仕事でもチームで作業を行う
プロジェクトチームごとに、チーフが進行管理をする
マネージャーが全責任を持ち、管理する
すべての進行を通信ネットワーク上で行い、記録する
納品データはスタッフ全員で確認・チェックする
プロジェクトスタート時に報酬を決定する
メンバーは増やしすぎない
(1マネージャに付き30人程度が最大)
通常の在宅ワークに比べて高額に受注/配分する

『チームSOHOのメリット』

一人では不可能な大きな仕事も、協力しあってこなせる。
すべてのやりとりが記録されるため、進行上のミスが少ない。
複数の目が入るため、ケアレスミス、判断ミスが少ない。
仕事内容に応じて、得意とするメンバーでチームを構成できる。
すべてネット上で行うため、設備維持や交通費などの経費が少ない。
スタッフが孤独感や不安感を感じずに作業ができる。
スタッフの急なトラブルにも、フォローしあえる。
地方在住でもスタッフとして参加できる。
経験/実力により、報酬が変わるためやりがいがある。

 


チームSOHOの未来

■ネットの向こうに上司がいて、仲間がいる

『Y's STAFF』の構成は、会社における組織に似ている。「マネージャー」は、すべてのプロジェクトを把握し、総合的な運営を行い、あらゆる決定権を持つとともに、クライアントに対する責任も負う。つまり「社長」である。そして、営業がいて、係長がいて、各担当がいる。担当、つまりメンバーは、上司から与えられた課題に対し、仲間と協力しながら仕事をすすめていく。上司に反論することもある。また、仲間と一緒に悩むこともある。時には、競い合うこともある。

『Y's STAFF』は、1つの仕事に対して、1つのプロジェクトチームを結成する。まず、マネージャーが仕事内容に応じてチーフを選定し、メーリングリストで参加メンバーを募集する。メンバーは、日程や仕事の内容から「やりたい」と思う仕事を希望し、選定の結果、プロジェクトに参加する。

このシステムにより、その仕事に最適なメンバーがチームを組むことになる。某Webサイトの「料理レシピ」コンテンツ作成プロジェクトには、元イタリア料理店勤務、元スチュワーデス、元パソコンインストラクターという、現実社会では考えられないメンバーで成功を収めている。

「チームSOHO」にはさまざまなメリットがあるが、中でも一番大きいのは、「みんなで1つの仕事を完成させる満足感」である。これまで子育てで悶々としていた主婦はもちろん、1人で仕事をしてきたベテラン在宅ワーカーでさえも、「納品しました」というメッセージに、何とも言えない喜びを感じることができる。ネットワーク上だけの付き合いだって、何も変わりはしない。みんな、一緒に仕事をする同士なのだ。

■考えた方向は正しかった!

「チームSOHO」と、私ひとりが騒いでいても何もかわらない。より多くの人がこれを実践し実績を作ることが大切だと考えた。そして、「チームSOHO」への思いを込めて、この5月にホームページを公開した。「チームSOHO」自体が試行錯誤段階のため、検索サーバーなどには登録せず、知人へのメール案内が中心だったが、その反響は大きかった。NIFTY SERVE 在宅ワークフォーラムへの転載依頼をはじめとして、講演依頼までも飛び込んだ。

しかし、一番の手応えは、『Y's STAFF』への参加応募だった。「チームSOHO」においては、人材がすべてだ。能力と経験、やる気と責任感がある人を集めることが、何よりも優先される。そこで、ネットワーク上で仕事をする参加希望ページには、あえて厳しい話を書き、自信のある人しか参加しずらい雰囲気を作った。しかし、それにもかかわらず、数ヶ月で50名以上応募があった。そして、履歴書を見て、その学歴、職歴のすごさに驚いた。もちろん、肩書きがすべてではない。しかし、こういう人材が、夫の転勤、子育て、介護、病気などで埋もれているのは事実なのだ。私の考えは、私が見つめている方向は間違っていなかった!

■そして、次のステップへ……

そして、今。『Y's STAFF』は、大きく変わろうとしている。書類選考、トライアルに合格した参加希望者と、東京、大阪で面接を実施。また、地方在住がハンデにならないよう、TV会議による面接も平行して行っている。メンバーを増強し、より社会に認められる仕事をこなし、実績をつみあげること。それが今の目標だ。

一方、現実的な問題もある。信用問題や金銭問題も含めて、個人でできる仕事の取引には限界があるのだ。今、真剣に会社にすることを考えている。

大きな池に小さな石を投げ込む程度のことであることは、よくわかっている。しかし、その小さな石がきっかけで、何かが変わるかもしれない。それを信じて頑張るしかない。今、会社で一生懸命働いている女性たちが、いつかSOHOで仕事をしなくてはならなくなったときのために……。

 


エピローグ

会社を退職して7年。その間、夫の転勤が5回、出産が3回。パソコン関連の在宅ライターとして11冊の単行本を出し、連載も数多く担当した。自分としては、よくやってきた方だと思う。しかし、今、SOHOという大きな波にのまれ、私の仕事に大きな変化が訪れている。『Y's STAFF』を真剣に運営しようと思い始めてから、東京に出る回数が増えた。寝る時間も減った。本来の仕事であるライター業も時間がとれずストップ状態である。

しかし、「まっ、いっか」、それが、私の今の正直な思いである。会社を辞めたとき、3人めを妊娠したとき、ライターをはじめたとき、私の選択に対して「行き当たりばったり」「ポリシーがない」「後先を考えない」と、非難する人が多かった、しかし、ある友人はこう言った。

「まあ、由利みたいに、しなやかに生きるのも、それはそれでいいよね。」

「しなやかに生きる」。なるほど。そういう考え方があるのか。長い人生、いろんなことがある。目の前が真っ暗になるようなショックな出来事を経験をするかもしれない。でも、その状況を嘆くのではなく、その状況の中で自分がどうすればいいのかを考え、行動する。川の流れに逆らわず、しかし、ちゃんと方向を見定めて、自然に生きる。それが「しなやかな生き方」なのかもしれない。

私自身、数年後にどこに住んでいるのか、どんな仕事をしているのかはわからない。しかし、今この瞬間は、ライター業を休業しても「チームSOHO」にかけてみようと思っている。理由は、これだけ多くの女性がSOHOというワークスタイルに「夢」をたくしていることを知ってしまったから……。そして、私が頑張ることで、彼女たちにも「しなやかに生きる」道を用意できるかもしれないから……。

 


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