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【ネット時評】「SOHO支援」――その期待と現実、可能性(2002/09/13)

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 検索エンジン「Google」で、「SOHO支援」というキーワードを入力してみた。検索結果は、約9万6000件。次に「中小企業支援」で検索してみた。2万3800件。さらに「個人事業主支援」で検索。すると、たったの27件。「SOHO支援」という言葉が、「ブーム」であることは確かである。また、「SOHO」と名乗れば、支援を受けられるような気さえしてくる。かくして、その実態は…。

■なぜ、「SOHO支援」なのか?

 財団法人日本SOHO協会では、SOHOを「インターネット等、ITを活用したテレワーカー。独立系の10人以下程度の小規模事業者」と定義している。他の自治体、団体でもほぼ同様の基準が設定されている。

 つまり、従来からある中小企業であっても、以前から業務を行っている個人事業主であっても、インターネットを活用していれば、なんと「SOHO」と呼ぶことができるのである。

 そして、冒頭にあるように、日本では「SOHO支援」が蔓延している。それには、理由がある。ここ数年、日本は国を挙げて、IT普及に力と税金を注いできた。その成果として、世界でも有数のブロードバンド大国になろうとしている。しかし、「環境を整えました」「便利になりました」だけでは、国民は納得しない。その効果は、「経済の活性化」という形で初めて評価される。とはいえ、この不況。リストラの嵐の中、「IT」は雇用を生み出すどころか、業務の効率化を促進し人員削減という逆効果さえ招いている。そんな状況下、「ITが生み出す雇用」として、注目されたのがSOHOだ。企業に属さなくてもインターネットを使って仕事をする人が増えれば、IT国家としての名目がたつ。また、人口流出に悩む地方自治体にとっても、魅力的な働き方となる。

■当事者不在で支援策検討

 昨年、北海道が主催する「SOHO検討委員会」の委員として、何度か会議に出席した。北海道在住のSOHOの支援をいかに行うべきかを検討する。地域の大学教授や、地元企業の代表、金融機関の融資担当者も含め、いろいろな業界から8名が参加した。しかし、支援される側の「SOHOワーカー」は、ほとんどいない。一応私は「SOHOワーカー」側となってはいるものの、一般のSOHO代表とは言いがたく、「近い存在」程度である。

 この人選は、北海道だけの問題ではない。おそらく、全国で実施されている「SOHO支援」に関する検討会も、似たりよったりだと想像する。このような検討会で「当事者不在」になる原因は、SOHOの根本部分に起因するからだ。

 SOHOというのは、元来、「個人」で仕事をする(一般的な定義には10人以下の小規模事業者も含まれるが、実際には個人が中心である)。このため、一般企業のように、規模や業種で安易に分類できない。業種も規模も千差万別。「○○業界のSOHO代表」とか「△△規模のSOHO代表」といった人は存在しない。

 このため「SOHOの代表者」として意見を述べている人たちは、支援事業団体の長であったり、斡旋会社の社長であったりして、「現場のSOHOワーカー」ではない。かといって、SOHOワーカー数人をピックアップしても、それは、あくまでも「一部のSOHOの意見」にしかならない。

 こんな状況であるから、当事者不在で検討・実施された「SOHO支援」は、ほとんどの場合、空振りで終わる。インキュベーション施設の提供、発注者とSOHOのマッチングサイト、SOHO能力診断サイト…。多大な費用がかけられているのにもかかわらず、上手に活用した一部のSOHOワーカーの、一時的なメリットとなるだけで、SOHO全体の底上げにはつながっていないというのが現状だ。

■「SOHOに仕事が来る社会」が必要 

 個人的な結論としては、「SOHOを支援して、SOHOを増やそう」という方向が間違っている。SOHOというのは、あくまでも、働くスタイルに過ぎない。いや、極端に言い切ると「働く場所と道具」による定義に過ぎない。つまり、家で、あるいは、近所の小さな事務所で、ITを使って仕事をしていれば、「私はSOHOです」と言えるのだ。そんな状況で、「SOHO支援」をすること自体、ハローワークに通うたくさんの求職者の中から無造作に数名をピックアップし、「あなた、どんな支援をしてほしいですか? 今言えば、かなえてあげますよ」と言っているようなもの。その人が「仕事をください」と言うと、「いや、仕事は自分で見つけてください。私たちは、その支援をしたいのです」と答える。

 ハローワークに通う求職者を減らすには、雇用自体を増やすという根本的な改革が必要である。同様に、SOHOというワークスタイルを広めるには、個々に場当たり的な支援をするのではなく、「SOHOに仕事が来る社会」を作ることからはじめなくてはいけないはずだ。

 「なぜ、今、SOHOに仕事が来ないのか?」→「SOHOに発注する企業が少ないから」。「なぜ企業はSOHOに発注しないのか?」→「SOHOだと信用がないのでリスクが高いから」。「SOHOに信用をつけるにはどうすればいいのか?」→「通常の会社と同じようにSOHOが働けるしくみをつくればいい」。これが私の考えである。必要なのは、個々の「支援」よりも、社会のしくみの「変革」なのだ。

■北見でのSOHOシンポジウム

"SOHOシンポジウム in 北見"。松永真理氏を交えたパネルディスカッションは、今まで、興味はあっても遠い存在だった「SOHO」をより深く理解することができたと好評だった
 

などと批判的なことを言いつつも、自治体の「SOHO支援」もまんざらでない、と思いなおす経験をした。

 先に述べた北海道の「SOHO検討委員会」の成果の1つとして、平成14年度、北海道内4カ所で「SOHO交流会」を実施することが決まった。そして私が住む、北見市もその開催場所として選定された。他地域では、既存のSOHOグループやIT関連の中小企業で小さな交流会を開くという。しかし、北海道でも道東のオホーツク地方に位置する北見では、交流会を実施するにも、「SOHO」で仕事をしている人、あるいは目指している人の存在すら見えてこない。しかし、「SOHO」と称して内輪の人間が集まっても意味がない。ここは、思い切り開き直って、隠れているSOHO事業者を見つけ、潜在しているSOHO志望者を探してはどうか。

 かくして、実施地域の中で一番小規模なオホーツク地域で、一番大規模な講演会を開くことにした。名づけて「SOHOシンポジウム in 北見」。北見で一番新しくて大きなホールを借りて、iモードの生みの親である松永真理氏をお呼びした。

 人口11万都市。IT関連の講演なら数十名集まれば上等と言われる中、260名が参加。松永氏の講演の後、「インターネットで本当に仕事ができるの?」というテーマのパネルディスカッションを開催。会場から、活発な質問が飛び交った。

 これを受ける形で、弊社で地域のSOHO向けコミュニティサイト(http://www.5012.jp/kitaminity/)を立ち上げた。現在約35名がメーリングリストに参加している。今まで「点」でしかなかった「地域のSOHOワーカー」が、北海道のSOHO支援策のおかげで、「輪」になりつつある。

■SOHOマネジメントのノウハウを伝えたい

 一方、「SOHO検討委員会」で私が、主張し続けた「SOHOに信用をつけるには、SOHOワーカーをマネジメントする人を育てることが大切」という内容を受けて、(財)北海道中小企業総合支援センターによる「SOHOマネジメント研修」が、9月初旬に札幌で開催された。2日間の講習には、私が講師として参加。SOHOワーカーがネットで協力し合って仕事をするツールや、SOHOワーカーを管理する手法など、培って来たノウハウを惜しみなく教えた。定員20名のところ、参加者は12名だけだったが、講習後のアンケートで、全員が5段階の評価で一番高い「満足」に○をした。また、主催担当者すら「途中で失礼する予定が、面白くて2日間受講してしまった」と言ってくれた。

 前述の松永真理さんが開発した「iモード」。その最初の発表会に来た記者はたったの7人。しかし、今、iモードの利用者は、3450万人。そんな壮大な夢を見ながら、機会を与えてくれた「SOHO支援」に感謝しつつ、より多くのSOHOワーカーに、「SOHOマネジメント」のノウハウを伝えることができるよう努力を続けたいと思う。

 今、全国各地で実施されている、あるいはされようとしている「SOHO支援」。一部のSOHOのための、一時的なメリットで終わるのではなく、現場の声に耳を傾け、将来を見据えた形で展開してくれることを願ってやまない。

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