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【ネット時評】<e-Japan戦略II特集(1)>期待するからこそ、国民が納得できるe-Japan戦略に!(2003/06/11)

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 「みんな偉い人たちばかり。私なんかが発言しても、低レベルな質問だと思われるだけじゃないだろうか」。5月29日に開催された、デジタルコア緊急討論会「e-Japan戦略 第2ステージを検証する」の会場でのこと。そんな私の心の支えは、ある言葉だった。それは、「e-Japan戦略II」策定の中心メンバーである國領氏の発表資料の中にあった。私は、その「生活に密着」という言葉をボールペンで力強く丸で囲み、勇気を振り絞って挙手した。

■「生活者」はどこにいるのか

 私の「生活者の視点が足りないのではないのか」という質問に対し、國領氏は「我々なりに思いを込めたつもり」と答えてくれた。『食』の分野を『農』としなかったという話は、心に残った。しかし、その「思い」は、このままでその「生活者」に届くのだろうか。

 ITを使って会社を経営し、ITのおかげで北海道のオホーツクで何不便なく生活している私でさえ、冒頭のように「場違い」を感じた。ましてや、ITの必要性を特に感じることなく生活している普通の国民にとって、「e-Japan戦略」は雲の上の話であり、自分たちの暮らしの中で語られることはほとんどない。

 しかし、今回の「e-Japan戦略II」は、その「生活者」が主役であるという。素晴らしいことであると同時に、とても危険なことでもある。主役不在のまま施策が検討、決定・遂行される可能性があるからだ。

 今回の戦略では「官と民が連携して」という言葉が頻出する。一緒にやっていくことに意義があり、その結果として成果が上がるということを「官」も理解している。それではなおさら、「民」と共に「生活者」の視点に立って、戦略を創りあげていくべきではないだろうか。

 今回の「e-Japan戦略II」について、評価される点は、わかりやすい「7つの分野」が設定されていたことだ。「国民にとって身近で重要」と記述されている通り、項目を見るだけで前の「e-Japan戦略」と違うぞということがわかる。

 そこで、緊急討論会に参加する前に、弊社のスタッフに意見を求めてみた。SOHOワーカーであると同時に、主婦であり母である、まさに「生活者」たち。しかし、残念なことに、届いた意見は数件。「e-Japan戦略II」の内容を読んではみたものの、その効果を実感できないという意見が多かった。「電子カルテや遠隔検針で、私たちの生活がどう良くなるの?」素朴な疑問である。一般生活者よりもITに近い存在であるはずの彼女たちにさえ「e-Japan戦略II」に込められた「思い」は、まだ届いていない。

■2010年テレワーカーは全就労者の2割?

 7つの分野のうち、私が生活者として興味があるのは「医療」「食」「生活」「行政サービス」「知」。だが、事業家として興味があるのは、「中小企業金融」「就労・労働」である。中でも、「就労・労働」にある「多様な就労形態を選択し、創造性・能率を発揮できる社会を実現」という項目は、インターネット上で会社を経営し、"ネット上での就労機会の創造"をライフワークとする私にとって、大きな意味を持つ(詳細は、末尾の別記事を参照)。

 以下、「e-Japan戦略II(案)」20ページからの抜粋である。

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ITを活用し、国民がそれぞれの人生設計に対応した多様な就労形態を選択することにより、就業において、一人ひとりがより創造的な能力を最大の能率で発揮しうる社会を実現する。ひいては、就業と家事・育児・介護の両立が可能となるなど、男女が共同して参画する社会の実現に資する。2010年までに適正な就業環境の下でのテレワーカーが就業者人口の2割となることを目指す。

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 まず前半。言い換えると「インターネットを使って仕事ができれば、場所や時間に縛られない、新しい就労形態が可能になる」ということである。しかし、これは、日本にインターネットが普及し始めた5年も前から、「テレワーク」「SOHO」「在宅ワーク」といった言葉で語りつくされてきた。しかし、現実はどうか。CI向上のためにテレワークを導入するもののその扱いに困る企業、独立はしたものの、仕事が得られないSOHO、在宅ワークに至っては「安かろう悪かろう」のレッテルを張られている。そんな現状を目の当たりにしている私に、後半の「テレワーカーが就業者人口の2割」という数字がむなしく映る。現状打開のための秘策は、いったいどこにあるのか?

 続く「方策実施上の課題と対応」の項目をみると、「企業のテレワーク導入のためのガイドライン整備」「テレワークに資する労働関連制度・規制の見直し」が挙げられている。しかし、これだけで実現できるのなら誰も苦労はしない。この分野にきっちりと目標値を設定してくれることはありがたいが、もっともっと現場の声に耳を傾け、現実を踏まえた方策を検討してほしい。ちなみに、2010年に就業者人口の2割にしたいという「テレワーカー」の定義が、注釈に記載されているのをみて、さらに落胆してしまった。

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1 ここでは、情報通信手段を週8時間以上活用して、時間や場所に制約されない働き方をする人と定義する。

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 果たして、週8時間、会社以外で仕事ができる就労形態が「時間や場所に制約されない」と言えるのだろうか。

■国民が納得できる目標を!

 改めて明言するが、私は「e-Japan戦略II」を非難したいのではない。この新戦略が、国民の生活向上に本当に大きな意義と効果をもたらすと感じているからこそ、生活者の立場として「主役である国民に素晴らしさを伝えたい」、また、事業者の立場として「適切な施策を実施し、社会を変えて欲しい」と心から願っているのである。

 このネット時評でも何度か書かせていただいたが、私は、現在の日本における「不況によるリストラ」「少子化」「地方の過疎化」といった社会問題を解決するカギは、「適切なITの利活用」であると確信している。「e-Japan戦略II」では、それをもっともっと声を大きくし、「目標」として主張してもいいのではないかと思う。その目標に国民が納得してこそ、「ITによる、官と民が連携した構造改革」の実現へ一歩近づくことができるのではないだろうか。

参考)ネット時評バックナンバー

ネットの狭間に眠る『戦力』は、生かされるのか(上)

ネットの狭間に眠る『戦力』は、生かされるのか(下)

 

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