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【ネット時評】ITでできること。地域でしかできないこと~オホーツクの町・北見にて~(2004/08/20)

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 「あんたがインターネットの何とかさんかい?」地元・北見の飲み屋さんで隣に座ったおじさんが話かけてきてくれた。「は~い、何とかです!」笑いをとりつつ、美味しい料理とお酒に会話が弾む。夫の転勤でたまたま北海道・オホーツクの北見に住み始め、この秋で丸7年。この夏、「地域」に対する私の思いが一気にはじけようとしている。

■地域のSOHOグループの現実

 2年前の初夏、北見市でiモードの産みの親・松永真理さんを招いたITフォーラムが開催され、約300名の市民が集まった。そのとき、この機会を無駄にしたくないという思いから、「Y's NET in 北見」というグループを作った。地元でSOHOを目指す人、あるいは実践している人がメーリングリストで情報交換する、ゆるやかな集まりだ。私が経営する会社ワイズスタッフは、全国のSOHOメンバーがネット上で仕事をしている。が、ネット上であるがゆえに、北見に住んでいる必要性もなく、地元のスタッフはほとんどいない。だから、地元でしかできない仕事を発注することも「Y's NET in 北見」の目的の1つだった。

 しかし、弊社のクライアントの9割は東京・大阪。実際にはなかなか地元SOHOに発注する仕事は発生しない。地元企業に目を向けるが、都会でさえもSOHOに仕事がまわらない中、いわんや地方においてをや。「Y's NET in 北見」は、スキルアップのための情報交換の域を超えられないまま、2年の月日が流れた。

■ITで北見を変えられるか?!

 せっかく『人』がいるのに、このままではいけない。「Y's NET in 北見」だからできること、地域グループだからできることを自ら創っていかなくては――。「Y's NET in 北見」から、北見市の「わがまちづくり支援事業補助金」に、2年前のような「市民に向けたITフォーラム」の開催を提案した。理解は得られたものの、事業資金約120万円のうち助成は20万円。あとは持ち出し。しかし、ここでやらずにどうする? 踏み出すしかない。

 「"I" love my "T"own きたみ」と銘打って実施したフォーラムのテーマは、「ITで北見を変えれるか?!」。東京から、商店街サイトを成功させた「ささはたドットコム」の長坂由佳さん、札幌から「YOSAKOIソーラン」を創設し、一大イベントを創りあげた長谷川岳さんを招き、私も含め3人でガチンコ・トークを繰り広げた。


 
お茶の間風舞台で3人が会場と語り合った「"I" love my "T"own きたみ」

 地域開催のフォーラムでは常識の「企業動員・自治体動員」は無し。純粋にこのテーマに興味のある人が200名近く集まった。会場アンケートの9割が「面白かった」と評価。「地域で何かをしたい」という『思い』が集まった。

■『人』『思い』『アイデア』『お金』

 一方、このフォーラムと並行する形で、チャンスがやって来た。ふるさと財団の「e-ビジネス助成事業」に、弊社が前々から温めていた事業アイデアが採択されたのだ。新事業のために、助成金が交付される。ここに「ITを使って地域を変えたい」という、『人』『思い』『アイデア』『お金』が出そろった!

 採択された事業は、「地域発信型Web観光クーポン事業」。クーポン事業は、人口や店の多い都市でしか成り立たないのが通説。これをあえて地域から作りあげるのだ。ポイントは3つ。

・オホーツク地域への観光客(年間100万人以上)への徹底的な広報
・地元民が自信を持って薦める店やサービスのみを掲載するブランド作り
・低コストで運営できる、新システムの構築と収益モデルの確立

 この3つを実現することにより、地域でも運営できるクーポン事業を展開できれば、その効果として、地域の観光産業の振興に寄与できるに違いない。

 事業採択は、7月はじめに正式決定。来年3月までに事業を軌道に乗せることが使命だ。しかし、オホーツクの観光シーズンはもう始まっている。このタイミングでスタートしないと、この事業は実現できない。無謀だとの声もある中、スタッフが一丸となり、8月10日に何とかトライアルオープンにこぎつけた。


 
夏の観光客に向けてトライアルオープン中(8/22まで)の「旅クー in オホーツク」

 トライアルオープンでは、観光客への広報として、女満別空港路線バスでの「広告ジャック」という従来手法と、Googleのアドワーズ広告という新しいネット手法を実施。その効果を見比べるなど、新しい試みもある。しかし、10月の正式オープンに向けて、やっと一歩を踏み出したばかりだ。

■地域と向き合える事業を育てたい!

 「地域情報化」という言葉は、日本を変えるキーワードだと思っている。しかし、その結果情報化した地域の先には、何があるのかが見えにくい。

 全国津々浦々に高速インターネット環境が完備され、多くの住民がパソコンを操作できるようになる。全国から買い物ができる。好きな映画がいつでも見られる。遠方のセミナーや会議に参加できる。東京の仕事を受注できる――。でもそれだけで、地域は本当に元気になるのだろうか。いや、違う。ネットを使って「都会と同じになろう」という考えではだめだ。情報化と同時進行で、地域にしっかり向き合った、地域の未来を見据えた、地域でしかできない事業を、地域と共に育てていく必要があるのだろう。

 もちろん、今回のWeb観光クーポン事業がそれに値するほどの大事業だとは思っていない。でも、向いている方向は正しいと信じている。「旅クー in オホーツク」という地域発信の事業を実現し、「Y's NET in 北見」のメンバーが、地元で、家にいながら、ネットを使ってできる仕事を創造したい。

 私は今、自分自身が「ITで地域の町おこしをする」ために、とてもいい環境、いい立場にいると思っている。都市圏近郊で生まれ育ち、全国を転々とし、そして今、日本の北にある地域で暮らし、IT関連の仕事をしている。さらにラッキーなことに(当コラムなどのように)全国に情報を伝える機会にも恵まれている。この幸せな状況を生かさずにいたら、地域の神様(そんな神様がいるのか?)のバチが当たるに違いない。

* * *

 「旅クー」構築のため、毎日のように地元民お薦めの店で食事をし、お酒を飲み続けたこの1ヶ月。冒頭のようなシーンが何度となくあり、地元の人々との出会いやふれあいの大切さを感じずにはいられない。北見という街で暮らし、北見という街を見つめてやっと7年。今ここで、自分ができること、ここでしかできないことに、真剣に向き合う時が来ているような気がする。

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