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【ネット時評】ITによる地域活性化事業 ~「共生」から「競争」へ~(2005/03/01)

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 「いいお店しか紹介しない? うーん、その方針だとウチは難しいなぁ」。地域のIT事業を進めるにあたり、「自治体」「協会」「組合」といった地域団体に協力を求めたときの反応だ。

 その事業とは、去年の夏のコラムでもご紹介した、地域発信型クーポンサイト「旅クー in オホーツク」。初めての地域事業に必死に取り組んで、半年。気がつくと、ここオホーツクは、流氷が海を埋め尽くす極寒の季節になっていた。

■公平・平等が原則の地域活性化

 北海道オホーツク地域とは、北海道の右上に位置する網走管内のこと。冬はマイナス20度にもなるこの地域は、ご多分に漏れず、若者の流出・駅周辺の空洞化・企業の撤退といった悩みが深刻な状況だ。これを食い止めるために、地域が一丸となって、地元の活性化に取り組んでいる。

 しかし、地域における「個(企業や商店)」はいろんな意味で弱い。自ずと、お金の調達から企画、実行まで、「地域活性化」の指揮を取るのは、冒頭に述べたような、自治体をはじめとする「団体」である。そして、その活動において、「不公平・不平等」はタブー。自治体は税金で、協会や組合は会員からの会費で運営されている以上、いたしかたない。みんなが協力しあい、みんなで元気になる。これが、地域における活性化の大原則なのだ。 

■地域活性化における抜け出せないスパイラル

 オホーツク地域の人口は、26市町村合わせても約35万人。残念ながら減少傾向にある。一方で、年間の入りこみ観光客は、1000万人を超える。さらに今年は、知床が世界遺産になるだろうという明るいニュースもある。そう、今、この地域の活性化のキーワードは「観光」なのだ。

 そんな中スタートした、観光客向けの「旅クー」。地域団体から多方面の協力が得られるかと期待したが、ふたを開けてみるとそうではなかった。「観光客におすすめの店やサービスしか紹介しない」というコンセプトが、地域活性化の大原則「公平・平等」に反したのだ。私自身、その事情も理解しているし、ご協力いただけないとしても、温かく見守ってくれていることに心から感謝している。しかし、本件に限らず、このような状況が止む無しとなることに、地域活性化の大きな壁があるのではないかと感じている。 

 「みんな一緒に」という方針は、地域側の運営上の都合でしかない。それを重視するがあまりに、様々な施策に制限がかかり、想定していた効果が出ずに終わる。そして、次の施策もまた団体に頼るしかない、という抜け出せないスパイラルに入ってしまってはいないだろうか。

■観光客は本当に美味しいモノを食べられない?

 去年の秋、九州に出張した。仕事とはいえ、せっかく遠くまで来たので、地元の美味しいものを食べたいと思う。しかし、その都市滞在は1泊。お酒を飲んで夕飯を食べるチャンスは1回しかなかった。

 JRの駅で地域団体発行の観光パンフを手に取った。パンフには、「食べ処」として30店近くが紹介されている。でも、全店一律に褒めているので、どこがオススメなのかわからない。

 ホテルでは、クーポン付きグルメ冊子を見つけた。しかし、観光客向けの広告である以上、これまた美味しい店かどうかの保証はない。しかたなく、冊子を示しながら、タクシーの運転手さんに訊く。「この中で美味しい店はどれ?」「地元の人が行く店は、そんなとこに載ってないよ。」

 お金と時間をかけた旅行。観光客は、美味しいものを食べたい、いい体験をしたい、忘れ得ぬ思い出を作りたい。そして、その思いに応えるのが、地域の「おもてなしの心」であるはずだ。地元の人が自信を持って紹介できるお店やサービスへナビゲートし、観光客の満足度を高めるしくみを整える必要があるのではないか。

 これが実現すれば、観光客は「また来たい」と思い、帰宅してからも知人や家族に自慢話をする。徐々にクチコミが広がり、さらにメディアの話題になればラッキーだ。多くの人が訪れるようになるし、たとえ実際に足を運ばなくても、ネット通販などで、地域の産物を購入してくれる。その結果、地域全体の活性化にもつながる。「観光」の主役は地元住民ではなく、観光客である。この基本を忘れ、彼らのニーズに応えない施策やビジネスは、最終的に大きな効果をもたらすことができないのではないだろうか。

■地域は「共生」から「競争」へ

 インターネットを最大限に活用することで、従来地域では実現できなかった「情報の発信」が可能になった。今、地域が一番力を入れるべき点は、そこで発信するための「情報の選定」だと私は思う。そして、その選ばれた情報に対し「ここなら信用できる」というブランディングができれば、状況が一変する。地域の中で選ばれるための自発的「競争」が発生し、その結果、地域全体のレベルが上がり、過去のスパイラルから抜け出すことができるのだ。

 また、「選定された情報」「信頼の高い情報」「ニーズの高い情報」は、自ずと情報価値を高め、新しいビジネスチャンスを産み出す。ミシュランやザガットがそのいい例である。地域でビジネスが生まれ成功すれば、公共のお金に頼らずに、継続的な地域活性化を推し進めることができるはずだ。「旅クー」は、そこを目指したい。 

 昨今の地域予算削減や公共事業減少で、「みんな一緒に」の時代は終わろうとしている。「共生」のぬるま湯にひたっていては、真の地域活性化への道は遠い。今までとは違う新しい発想で、他に負けない事業に取り組まなくてはいけない。地域活性化へのトリガーは、「共生」からの脱却と、「競争」の喚起に違いない・・・と、自分を励ましながら、寒さと戦う毎日である。

 #「旅クー」は、新しいビジネスモデルの構築、地域からの全国展開など様々な「野望」を持っている。ご興味を持っていただける方は、ぜひこちらを。
「旅クーの夢と目標」

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