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【ネット時評】テレワーク導入で、企業の生産性は向上するのか・ネットオフィス型テレワークの提案(2007/09/27)

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 「テレワークを、21世紀の一般的な働き方にしたい。」

 今年5月、政府の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」で承認された「テレワーク人口倍増アクションプラン」の説明会で、内閣府担当者が熱く語った。このプランには、2010年までに「テレワーカーの就業者人口に占める割合を2割にする」という数値目標と、各省庁に向けた行動指示が明記されている。(田澤由利・ワイズスタッフ代表取締役)

 私がネット時評で「安倍政権『テレワーク施策』への期待と提言・テレワークマネジメントの必要性」を書いてから10カ月。テレワークを取り巻く状況はめまぐるしく変化している。政府は今なぜ、ここまでテレワーク普及に力を入れるのか? 企業にテレワークを導入するには、何が必要なのだろうか?

■「労働力不足時代」の救世主としてのテレワーク

 テレワークとは、「ITを活用して、場所と時間を自由に使った柔軟な働き方」だ。政府がこのテレワークに力を入れるのには、明確な理由がある。ご存じのように、日本はすでに少子高齢化社会に突入している。たとえ現在進行中の少子化対策が功を奏したとしても、これから生まれる赤ちゃんが労働力となるには20年以上かかる。つまり、今から少なくとも20~30年間、日本全体が「労働力不足」に陥ることは避けがたい現実なのだ。国内における労働可能な年齢の人口が限られている以上、その対策は2つしかない。

(1)「働く人」の一人当たりの仕事量を増やす

(2)「働きたいのに働けない人」が働けるようにする

 (1)について、高度経済成長期のように「一人当たりの働く時間を増やす」のは、世の中の流れからありえないだろう。目指すべきは「業務の効率化」。働く個人個人の業務を効率化させることで、労働時間を減らしつつ、総労働力をアップさせなくてはいけない。

 (2)は「埋もれる労働力の活用」だ。育児、介護、地方在住、高齢など、さまざまな理由で「働きたいのに働けない人」がまだまだたくさんいる。その人たちに働ける機会・働ける場を用意し、労働力の増加を図るのだ。

 これらの課題に対し、政府が出した1つの答えが「テレワーク」だ。(1)を実現するために欠かせない「IT化」を促進し、(2)を実現するために欠かせない「時間と場所」の壁を無くす新しい働き方。そう、政府がテレワークを推進する最終的な目的は、確実にやって来る労働力不足時代における「社会経済活力の維持・向上」に他ならない。

■テレワーク普及の鍵は「企業の生産性向上」ストーリー

 この原稿を書くにあたり、複数の「テレワーク導入を検討している企業」にヒアリングを行った。対象社員や日数は様々だが、ほとんどの企業が「福利厚生」だけでなく、「(女性に限らない)人材確保」や「生産性の向上」をその目的としていた。企業も政府と同様に、「労働力不足の30年」に向けて「企業力の維持・向上」が重要課題となっており、その答えを「テレワーク」に求め始めている。

 しかし、企業の究極の目的は「利益追求」である。テレワークを導入しても、目的である「生産性の向上」を実現できず福利厚生にとどまるようであれば、景気や企業の経営状態によっては、数年で制度が取りやめになる可能性は捨てきれない。

 テレワーク普及の鍵は、「企業の生産性が向上するかどうか」だと言い切ってもいいだろう。しかし、テレワークを導入すると、本当に企業の生産性は向上するのだろうか。実は、すでに導入している企業ですら、まだその答えを明確に出せないでいる。「導入コストに見合う、生産性向上のストーリーがないとトップを説得できない」と悩む企業担当者もいる。

■チーム業務における、現状のテレワークの限界

 IT関連企業に限らず、さまざまな業種の企業がテレワークの導入を検討している中、トライアル(試験的導入)をスタートさせる企業も少なくない。トライアルでは、「特定の部署で数名だけ、週に1日程度のテレワーク」を実施するケースが多く、「テレワークの日には、資料作成など一人で集中できる業務を行う」としている。

 トライアルにおいて、テレワークを実施する社員は、会議の議事録や提案資料等を集中して作成できるため、「業務効率が向上した」という結果が得られやすい。しかし、日本の企業における業務は「個人」単位ではないことが多い。課や係、グループやプロジェクトなど、複数の社員で構成される「チーム業務」がほとんどだ。これを意識せずに、テレワーク導入の効果を評価してしまうのは、少々危険ではないだろうか。

図1 チーム業務におけるテレワーク比率の考察
     図1 チーム業務におけるテレワーク比率の考察

 例として、トライアル導入で、5名のチームにおいて1名が週1日テレワーク作業をしたケースを考えてみよう(図1)。チーム全体におけるテレワーク比率はわずか4%だ。では、本格導入で対象社員や日数が増えるとどうなるだろう。5名全員が週2日テレワークを実施する場合、その比率はなんと40%。「資料作成など一人で集中できる業務」が4割も占める、そんなチーム業務があるだろうか。結局のところ、「(業務を優先して)テレワークをしない」か「(テレワークをして)チームの業務効率が低下する」か、どちらかの結果となることは想像に難くない。

 ■テレワークでも通常業務が可能なほどのIT化

 「チームとしての業務効率向上」のために、まずすべきことは、「テレワークでできる仕事は限られる」という、従来からの固定概念を取り除くことだと私は考える。

 松下電器産業は、2007年4月から3万人のホワイトカラーを対象にテレワークを正式導入した。その「e-Work」制度では、在宅勤務だけでなく、モバイル勤務、サテライトオフィス、フリーアドレス制を導入し、従来の業務形態を大きく変える改革を行った。また、2006年からテレワークを試験導入しているNECも、「ブロードバンドオフィス」コンセプトのもと、場所を選ばず業務を可能にするネットワークの構築と、社内資料のペーパーレス化をベースに、テレワークの環境整備をすすめている。

 これらの事例からも推測できるように、企業の生産性向上を目指すのであれば、「テレワーク用に、仕事を切り分けよう」ではなく、「業務全体をテレワークでもできるようにしよう」という発想に切り替える必要があるのだ。つまり、「テレワークでもチーム業務が可能なレベルにまで、業務をIT化する」ことができれば、チームに属する社員はどこにいても通常業務が可能となる。その結果、チームに何人かのテレワーカーが含まれていても、業務効率の低下にはつながらない体制を構築することができる。(対面販売や製品組み立てなど、IT化不可能な業務は除く)

 そこで、ひとつの仮説が成り立つ。企業のテレワーク導入の最終目標を「テレワークでも通常業務が可能なほどのIT化」に置けば、その過程の中で、自ずと企業全体の生産性を向上させることが可能になるのではないか。そして、この仮説について、私は現時点で1つの実証結果を出すことができる。

■新しいテレワークを実現する「ネットオフィス」

 政府のアクションプランの中に、企業のテレワーク事例として、「ネットオフィス」という形態が記載されている。ネットオフィスとは、「インターネット上で運営するバーチャルな部門または会社」だ。インターネット上に「会社(オフィス)環境」を構築することで、テレワーカーがチームを組んでメイン業務を行うことが可能になる。ネットオフィスでは、チーム業務遂行に必要なほとんどの情報がデジタル化され、ネット上で共有されている。業務指示から「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」まで、プロジェクト内のコミュニケーションもすべてネット上で行われる。その結果、チームの一員であるメンバーは、会社にいても、モバイル中でも、自宅にいても、通常と変わらない業務が可能だ。またその副産物として、「会議数の減少」「報告書作成の軽減」「言った言わないのトラブルの防止」という、従来業務の効率化も実現している。

 実は、ネットオフィスは私が提唱したモデルだ。その実践のためにワイズスタッフという会社を設立した。日本全国各地に在住するテレワーカーが、チームでプロジェクト業務を行うことで、昨年度の売り上げは1億6千万を超えた。決して劇的な数字ではないが、「ネットオフィス」の可能性は示せていると思う。

■ネットオフィス型テレワークによる「生産性向上」

図2 従来型テレワークとネットオフィス型テレワークの比較
  図2 従来型テレワークとネットオフィス型テレワークの比較


 前述の仕事を切り分けるテレワークを「従来型」とするならば、チーム業務ができるテレワークは「ネットオフィス型」だ。テレワーク用の仕事を切り分けることで実現する「従来型テレワーク」に対し、「ネットオフィス型テレワーク」は通常の業務を徹底的にIT化することがポイントとなる。(図2)

 

従来型テレワーク:

 セキュリティ対策や社内規程などを決定すれば比較的導入しやすい。しかし、資料作成など単純な業務が中心となる傾向があり、テレワークを実施する社員や日数が増えると、チーム業務の効率を低下させる危険性がある

ネットオフィス型テレワーク:

 テレワーカーを含むチーム全体業務のIT化(ペーパーレス、フリーアドレス、業務コミュニケーションツールの導入等)が必要になる。しかし、テレワークで可能な業務の幅が広がり、結果としてチーム業務の効率化、ひいては企業全体の生産性向上を実現できる可能性が高い

 タイトルに掲げた「テレワーク導入で、企業の生産性は向上するのか?」に対する、私の答えは「YES」である。しかし、チーム業務の体制を見直さず、テレワークを実施する社員の制度整備に注力する「従来型テレワーク」だと、福利厚生レベルにとどまり、生産性の向上に至らない可能性がある。企業が「生産性向上」を目指すのであれば、「ネットオフィス型テレワーク」を意識した導入をすすめるべきだと私は進言したい。ただし、松下電器産業が実施したような、全ての会社業務のIT化をいきなり目指すのは、大多数の企業にとって簡単なことではない。まずは、特定の一部門、1チームから「テレワークでも可能なIT化」の整備をしつつ、テレワーク導入のトライアルを実施してはどうだろうか。

■テレワーク導入の最大の課題は、ワーカーの意識

 企業のテレワーク導入のもっとも大きな壁は、「ワーカーの意識改革」である。ある大企業の人事担当者が「わが社では、フレックスタイム制度すら利用者が少ない。テレワークを導入しても利用されないのではないか」と不安を語った。「ワークライフバランス」や「ダイバーシティ」という言葉が飛び交ってはいるものの、実際には「多少体調が悪くても出社するのが当然」「会社にいること=仕事をしている」「長い時間働く社員=よく働く社員」という考え方がまだ根強い企業は少なくない。企業トップはもちろん、社員にも、いかにしてテレワーク導入の「生産性向上ストーリー」を理解してもらうかが、普及の課題である。

 しかし、労働力不足は、避けがたい現実である。いつまでも古い考え方にとらわれ、「テレワーク」という新しい働き方を受け入れられない企業は、いずれ「能力のある人材を採用できない」「心の病で出社できない社員が増える」「IT化による効率化が図れない」といった問題に突き当たり、企業力が減退していくことになるだろう。

                   * * *

 個人的な話になるが、夫の転勤と子育てで会社を辞めざるを得なくなった私が、今、大好きな北海道で会社を経営し、家族と幸せに暮らせているのは、まさにテレワークのおかげだ。その感謝の気持ちを込め、私はライフワークとして「テレワークの普及」に取り組んでいる。この原稿に書ききれないさまざまな思い、さまざまな情報を少しでも多くの方に届けるために、私が持つテレワークの情報をブログで発信していこうと思う。興味のある方はぜひ訪れていただきたい。

田澤由利のテレワークブログ

 また今年度、弊社は独立行政法人 情報処理推進機構「2007年度 中小IT ベンチャー支援事業」に採択され、テレワーク(在宅勤務)に最適なプロジェクトの生産性向上システムの開発に取り組んでいる。機会があれば、「ネットオフィス型テレワーク」に必要なツールについても、お話ができればと思っている。

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