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【ネット時評】テレワーク普及はなぜ進まないのか――「子育て」「雇用」などの施策と連携を(2009/11/09)

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 「テレワークって、電話対応の仕事だと思って来たのですが…」私のテレワークの講演に来た女性にこう言われ、ショックを受けた。

 「2010年に就業人口の2割をテレワーカーにする」という目標を掲げた、政府が「テレワーク人口倍増アクションプラン」を出してから2年半。総務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省の4省がそれぞれの施策を推進してきた。そしていよいよ来年は、その審判の時を迎える。国土交通省の調査によると、2008年時点でテレワーク人口は就業人口の15%。このペースであれば、来年には2割の目標を達成できるだろうと予測されている。

 しかし、本当に「テレワーク」は、日本に普及したと言えるのだろうか。

 テレワークでも働ける会社を作りたいと、北海道の北見で起業して11年。テレワークの普及に、自分なりに意見や情報を発信してきた(http://telework.blog123.jp/)。この場をお借りして、テレワーク推進における、現状の問題点と方向性について、私見を述べさせていただきたい。

 

■テレワークが本当に普及しきれていない原因

 自動車メーカー、飲料メーカー、流通、金融など、最近は、ITがメインではない企業のテレワーク(在宅勤務)導入も進んでいる。また、新型インフルエンザの流行により、テレワーク(在宅勤務)への注目度が増し、関連システムの売上が大幅に伸びているという。

 しかし、普及というのは、「該当している人」を洗い出し「○%」という数字を出すことではないはずだ。冒頭の女性の言葉もそうだが、地方で中小企業の経営者にテレワークの話をしても、なかなか理解してもらえない。子育てと仕事で悩んでいる女性でも「自宅で働くなんて、考えもしなかった」と驚かれたことがある。

 地域や職種にかかわらず、普通に仕事をしている人たちが、「テレワーク」という働き方を知り、自ら求める人が増えてこそ、「テレワークが普及した」と言えるのではないだろうか。

 では、テレワークが、本当に普及しきれていない原因は何か。その普及施策の方向性に問題があったのではと、私は考える。



 テレワークは、あくまでも「働き方」である。日本が直面しているさまざまな課題を解決するための「手段」の1つだ。にもかかわらず、テレワークを普及させること自体が「目的」になり、さまざまな課題解決の流れとは別に、テレワーク普及施策が単独で実施されてきた。このため、「実証実験」「シンポジウム」「減税・補助」といった、いわゆる初期段階の施策にとどまり、結果として、国民の注目を引くことができなかったのではないか。

 「少子化」「失業率の増加」「地域過疎化」など、まさに今、政治の場やマスメディアで語られているさまざまな課題において、テレワークは有効な「手段」であるはずだ。これらに対する施策と連動し、具体的な「目的」を達成する手段として、テレワークを推進すれば、より多くの人たちに認知され、その効果をより正しく伝えることができるはずだ。

 

 

■他の施策と連携できていないテレワーク施策

 国が推進している各種施策におけるテレワーク施策について考えてみよう。

<少子化対策>
 子育てと仕事の両立支援を目的に、2009年6月に成立した育児・介護休業法の改正では、「子育て中の短時間勤務制度や残業免除の義務化」「父親の育児休業の取得促進」などが盛り込まれている。しかし、子育て支援は、短時間勤務や育児休業だけが回答ではない。「仕事の中断」「キャリアロス」を理由に出産を迷っている女性や、育児休業中の父親にとっても、在宅勤務は貴重な選択肢となる。

 

<子育て支援>
 民主党がマニフェストに掲げた「子ども手当」は、子育て家庭の金銭的支援にはなるだろう。しかし、共働き家庭が増える中、子育て時期に子どものそばにいる大人が少なくなっている。こればかりは、お金では解決できない。父親、母親、どちらでもいい。子どものそばで働けるテレワークの推進は、子育て支援はもちろん、次世代の育成という意味でもその役割は大きい。

 

<中小企業支援>
 中小企業のIT経営を推進すべく、全国の地域でさまざまな啓蒙やITの導入支援が実施されている。しかし、その推進方針の中に「テレワーク」の言葉はない。私は、IT経営の導入はテレワーク実施への第一歩であると考えている。業務のIT化を進めることができれば、その先にテレワークが可能になり、業務の効率化、人材の確保、パンデミック対策等の大きなメリットが享受できる。企業のIT化の先に、テレワーク導入を位置づけることは、そんなに難しいことではないはずだ。

 

<労働力不足対策>
 「テレワーク人口倍増アクションプラン」が発表された際、内閣府の担当者は、労働力不足対策としてのテレワークの重要性を強調した。しかし、ここ数年進んでいるテレワークは「大企業の在宅勤務」が中心だ。このタイプのテレワークは、「労働力を増やす」のではなく、労働者の数「1」を「1」のまま維持するものである。労働力不足対策としてのテレワークは、労働者の数「0」を「1」にしなくてはいけない。

 子育て、パートナーの転勤、親の介護、地方在住などを理由に、働きたくても働けないでいる人たちが多く存在する。テレワークによりそうした人たちが働けるようになれば、「労働力を増やす」ことができる。

 しかし、残念ながら、この形を促進するテレワーク施策は、現時点でほとんど実施されていない。その理由の1つに、「テレワーク人口」を効率よく増やすためには、企業の在宅勤務推進のほうが効率的だから、というのがあるのは否めないだろう。

 

<地域活性化対策>
場所に縛られない「テレワーク」を活用すれば、「離れた地域でも働ける」はずだ。しかし、前述したように、東京を中心に「大企業の在宅勤務」が進み、現実には「東京の大きな企業に就職しないと、テレワークできない」という状況だ。本末転倒である。

 工場誘致施策を推進する地域は多いが、企業が地域に求めるのは安い労働力だ。高度な技術や知恵は東京にある。今回の不景気で多くの工場が撤退し、地域に残ったのは失業者だけ。未来につながる「技術や知恵」は残らない。

 東京の企業で働く社員が、親の介護などで故郷に戻っても、テレワークで雇用を継続できたら…。東京で経験を積んだ人が、地域に移り住みテレワークで事業を始めたら…。地域のテレワークの推進により、「工場」ではなく「技術や知恵を持った人材」を誘致するべきだと私は考える。

 

■ITによる「究極の柔軟な働き方」がテレワーク

 さらに、国の各種施策と連動できたとしても、テレワーク普及はそう簡単には進まない。理由は、「テレワーク」が「ワーク(働く)」である以上、企業経営者の理解と行動なくしては、実現できないからだ。企業経営者に対し、突然「テレワークしましょう」と提案しても、受け入れてもらえないだろう。

 そこで私は、フレックスタイム制度や短時間勤務などの「柔軟な働き方」の究極の形がテレワークである、と位置づけることが、テレワーク普及の近道であると考えた。まず、「柔軟な働き方」の重要性を提示した上で、その究極の形である「テレワーク」を伝えるという流れだ。

 実は、日本では「柔軟な働き方」自体がまだ普及しきれていない。しかし、この原因は「テレワーク」も同じなので、私はその鍵がどこにあるのかを知っている。

 「雇用」は、働かせる側と、働く側があって、はじめて成立する。どちらかが力を持ったり、どちらか一方だけを支援すると、そのバランスが崩れてしまう。「柔軟な働き方」ができる社会にするには、企業側が「柔軟な働かせ方」のメリットを理解し、かつ、導入しやすくしなくてはいけない。

 企業メリットは、投資した金額に対して、利益が出るストーリーを明確に提示することが重要だ。福利厚生やイメージ向上だけでは、動かない。一方、導入のしやすさのポイントは、中小企業の経営者の立場からあえて断言すると、「賃金制度」にある。企業経営者が納得し、柔軟な働かせ方ができる「賃金制度」があれば、導入の壁は低くなるだろう。

 

■「柔軟な働かせ方」が可能な「フレックス賃金制度」の提案

 私が経営する会社では、この秋から「柔軟な働かせ方」が可能な、「フレックス賃金制度」を取り入れた。弊社オリジナルの制度だ。目指したのは、「柔軟な働き方」をする従業員を優遇する賃金制度ではない。企業経営者や、フルタイムで働く他の従業員が「負担」や「不公平感」を感じることなく導入できる賃金制度だ。

 通常「月給」は、社員が「月から金まで、9to5で、出社して働く」ことを前提に、その人の勤務年数や業務評価から設定されている。これに対し、新しく導入した「フレックス賃金制度」では、まず、その人の業務評価を反映したベースとなる時給を設定する。ここに、「フルタイム手当(9to5で働く)」「フルウィーク手当(月曜から金曜まで働く)」「出勤手当(会社に通勤する)」「時間拘束手当(決まった時間に働く)」など、働く形態によって手当を加算する。

 ボイントは、以下だ。

●フルタイムで働く社員に、不公平感を感じさせない

●会社にとってメリットのある働き方をしてくれた人に手当を支給する、という考え方のため、経営者が理解しやすい

●時間、働き方にかかわらず、能力次第で給与を上げることができる

●フルタイムで働けるようになれば、元の給与に戻すことができる

 

 この「フレックス賃金制度」では、フルタイム勤務はもちろん、時短勤務、パート勤務、在宅勤務など、さまざまな労働形態に柔軟に対応できるようになっている。

 「柔軟な働き方」のための新しい給与体系例

新しい給与体系における基本給の内訳
 

 

 まだこの挑戦はスタートしたばかりだが、ひとつの参考事例としていただけると幸いだ。

 


■「柔軟な働き方」が、社会問題を解決に導く

 最後に、「柔軟な働き方」を推進することで、現在日本が抱えるさまざまな課題に対して、どのような解決方法が示せるかを考えてみた。

 景気回復と雇用は、確実に連動している。景気が良くなれば、雇用は増える。雇用が増えれば、消費が増え、さらに景気が良くなる。重要なのは、この好循環に持ち込むために、どこにテコ(施策)を入れるか、である。

 たとえば、緊急雇用対策として「柔軟な働き方」での雇用を促進するというのはどうだろうか。最初からフルタイム雇用は難しくても、企業実績の回復に向けて、徐々に労働力を増やす選択肢として、柔軟な働き方(短時間勤務・在宅勤務など)を企業に提示する。そこに金銭的補助をすれば、企業のガードも緩むはずだ。このとき、「柔軟な働かせ方」を実施する企業に対して、減税などの具体的メリットを示すことも重要だ。

 また、少子化対策として、育児休業中でも「1日4時間だけ在宅勤務」という柔軟な働き方の導入を支援してはどうだろうか。出産して育児休暇をとったら元の職場に戻れないのでは、と不安に思う従業員が出産に踏み切れるかもしれない。

 業績回復傾向にある首都圏の企業は、地方に住む有能な人材を、在宅勤務という柔軟な働き方で採用することを支援してはどうか。まだまだ景気回復の兆しがなく、失業率が高い地方の若者の就業対策になるだろう。

 さらに、自然災害やパンデミック対策として、IT化や在宅勤務を推進する企業を支援してはどうだうろか。なかなかIT化に踏み切れなかった地方の企業が、一歩を踏み出す機会にならないだろうか。

 民主党を中心とする新政権は、「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」を発足させ、新たなIT政策について検討を始めている。具体的な内容はこれからだが、個人的には、上記のような視点と方向性で「テレワークの普及・推進」を、さらに進めていただけることを切に願っている。 

 

[2009年11月9日]

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